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parallel game ・ 4


 ――世界は変わって、悪魔界。
「あら、数が合わないわね」
 クライムは、大して困ってもいない様子でそう言う。
 彼女の言葉の意味するところは、異世界へ飛ばした人間のグループに対して、それに続けて送った悪魔のグループの数が少ないと言う事だ。
 ……つまり、何の説明もされずそのまま放りっぱなしにされてしまう、かなり可哀想な人が出てくる訳である。
「別に構わないと思うが」
 それに対するエイザードも、困りなどまるでしていない様だった。
 まぁ、それもそうだろう。彼らは別に異世界に迷い込んでいる訳ではないのだから。
 ……第一、そこでどうこう思う様な人物なら、初めからこんな事をしたりはしない。
「それはそれで面白いかしらね……」
 ふふふ、と楽しげに――もしくは妖しげに――笑うクライムは、ある事を思いつく。
「あぁ、里見が勝手に何の関係も無かった筈の人間を連れて行ってるじゃない。数合わせにはちょうど良いわよ」
 要するに、初音の事だ。クライムはその数合わせに彼女を使おうと、そう提案したのである。
「様子を見る限り一応の事情は解った様ではあるからな。なんとも都合が良い。これで問題は解決だ」
「じゃあ、決定ね」
 もちろんそれにエイザードが反対するはずも無く、むしろ乗り気の様子。
 この二人の辞書に "ためらい" などと言う文字は、絶対に載っていない。その上、"良心" などと言うものは、向こうの方が逃げて行くのではないかと思われる。
 そんな彼らが行動するのは早かった。

 ――と言う訳で、"悪魔に振り回される" と言う言葉が属性にでもなりそうな戸叶初音は、可哀想な事にまたも突然に別の場所に飛ばされる事となった……。


「うわっ…………」
「…………」
「……えーっと、こんにちは?」
 ――今ここに居るのは、小夜・麻乃・香月・ルート、それから今しがたここへ来た初音。
 上の科白は、順に初音・その他・香月、である。
「どうやら彼女も、君達と同じ体験をした様に見えるんだけれどね」
 ルートが冷静な状況判断を下す。
 ……そしてそれは、ある意味で非常に正しく、ある意味でかなり間違っていた。
 初音は確かにここへ飛ばされたと言う点では、小夜達と同じである。しかし、その経緯は全く違う。その上彼女は、二度も飛ばされているのだから、"違う体験" とも言えるだろう。
「……もしかして、あなた達も悪魔に飛ばされた人達なの?」
 初音の言葉に、他の四人は首を傾げる。
 まぁ、彼らはこの状況に、悪魔と言う存在が介在している事を知らないのだから、それもおかしくは無い。今この場で詳しい事を知っているのは、初音だけなのである。
「悪魔って、どう言う事?」
 代表する様に、小夜が初音に訊ねる。
「あー……ここには悪魔は来てないのか。て事は、ここに来た訳も何もさっぱり解ってない?」
 初音は、今の彼らの状況が飲み込めたらしく、そう訊き返す。
「そうだね。あなたは解ってるみたいだけど」
「全部じゃないけどね」
 そう言って初音は、さっき麻衣から聞いた事を彼らに繰り返した――――


 ――そして場所が変わって、アンティークショップの前。
「あの……もう一人の女の子がどこかに消えちゃったみたいなんですけど?」
 詩織が、何で誰も何も言わないのかを不思議に思いつつ、そう訊ねる。
「初音の事? どうやら、エイザード達に別の場所へ飛ばされたみたいね。全く、本当に、初音も大変だわ。まぁ、どこかには居るから安心しても良いわよ」
 全然大変だと思って居ないかの様に――むしろ楽しんで居るかの様に――麻衣は答えた。
 詩織は、他人事ながらに "うわー、ものすごく可哀想……" と思った。
 それは、きっとその場にいた誰もが思ったに違いない……。


 ――そしてまた、悪魔界。
「……ゲームらしくないな」
 エイザードがつまらなそうに呟いた。
「何故?」
「何もヒントが無いからだ。こういう場合は、非常に解りにくいヒントで困らせるのが常識だろう?」
「そうね。じゃあ、何か考えようかしら」
 ……そんな常識など聞いた事も無いが、この二人ならばそうなのかもしれない。
「どんなのが良いかしらね……」
 エイザードとクライムは真っ黒い笑顔を浮かべながら、人々をさらに困らせる方法を考えていた。


「ねーライル君、帰る方法を探すヒントとかは無いの?」
 いろんな所を見て回った後、一休みしている私達。
何か二人を連れまわしちゃったみたいなんだよね。特にキール君なんて、うんざりしている様にしか見えない。
「うーん、はっきり言って無いね」
 いい加減帰る方法を探さないと、と思って聞いたのに帰ってきたのはそんな言葉。
 そんな風にあっさりきっぱり答えられたら、もうどうしようもないんだけど……。
「だから、"見つかるかどうか解らない" って言ったんだね」
 ライル君の言葉を思い出して、そう言う秋夜君。
「そうそう」うなずくライル君。「それでゲームだなんて、何か間違ってると思わない?」
「ゲームとか、それ以前の問題だろ」そう言ったのはキール君だ。「ただ他人で遊びたかったじゃねーか」
 私もキール君の意見に賛成。
 だって、ライル君も "人で遊ぶのが趣味な人がやったんだよ" みたいな事を言ってたし。たぶんゲームなんて言うのは、後でとって付けたものなのだろう。
「そんなので、どうやって帰る方法を探すの? どこでどう在るのかも解らないのに」
「おれにも解らないからなー。そのうち、気が向けばヒントが降って来たりするんじゃないかな」
 何だかずいぶんと適当な事を言っている様な気がするんだけれど……。そう思うのは私だけなんだろうか?
「"ヒントが降って来たり" って……ありえなくも無さそうだけど、そんなに都合の良い事が起こるとも思えないよ。……どうやったら帰れるのかな」
 秋夜君は考え込む。――そんな秋夜君の姿、とってもかっこ良いw
 もちろん普段からかっこ良いけれど、なんて言うか、かっこ良さが三割り増しなのw
「帰る気は一応あるんだねー」
 私が秋夜君のかっこ良さに見惚れていたら、ライル君が微妙に失礼な事を言った。
 どうやら彼は、思った事をさらっと言っちゃえる人らしい。……うーん、すごい。
「もちろん帰る気はあるわよ。まぁ、別に帰れなくても秋夜君と一緒なら困らないけどw」
「そうだね。一緒に帰れるか、二人とも帰れないか、だからね」
 秋夜君はにっこり微笑んで……って、きゃーっっw 秋夜君の笑顔は、ステキさが十割り増しなのよw
 もちろん秋夜君は、普段からステキなんだけどねっ☆
「成程ねー。だからあんなに慌ててなかったんだ」
 ライル君は納得した様に言い、
「……そんなんでいーのか?」
と、キール君は納得していない様に呟いた。
「良いんだよ。僕達が納得していればね」
 秋夜君がさらりと言ったその一言。
 ――私は、ものすごく嬉しかったw

 ……って、そう幸せに浸っている時間はそう無くて。
 何故か、ライル君の言った通りヒントが降って来たりした。そんなのアリなのかと思ったけど……ホントの事だから仕方が無い。
「――何で、英語で書かれてるのよ」
 私は空から降ってきた一枚の紙を見て、そうとしか言い様が無かった。
「それは、悪魔界では英語が共通語だからだよ」
 ライル君から返ってきたのは、とーっても意外な答え。
 でも、何だか悪魔界が身近に感じられる様な気がする。悪魔界だって異世界なのに、言語が同じだからなんだろう。
「ふうん、そうなの? そのわりには日本語上手よね、ライル君」
「そんな事は無いよー」ライル君はにっこり笑って否定した。「たぶん勝手に翻訳されてるんじゃないかな。だってそうじゃないと、言葉が通じないからさ。おれ日本語はちょっとしか喋れないし。キール君なんかは、全く違う言語だと思うよ。ねぇ?」
「オレに同意を求めるなよ。……でも違うんだろーな。そんな文字は見た事無いぞ」
 ……まぁ、とりあえず納得。
 て言うか、ライル君って日本語ちょっとでも喋れるんだ。そっちのほうが意外だったりして。
「ところでこれはどういう意味なんだろうね。何だか詩みたいに書かれてるけど」
 紙に書かれた内容を読んで、秋夜君が首をひねる。
 私もそれを読んでみるけど……ホントに意味が解らない。英語は読めるし訳も出来るけど、何が言いたいのかが解らない。
 うーん、よっぽど意地が悪いんだろうな、これを書いた人は。
「"すぐ近くかもしれないし そうでないかもしれない
  遠ざかるか近づくか それは運しだい"
  そこまでは何となく意味が解らなくも無いのよねー……」
「その後が問題かな。
"それはきっと吹く風の様に そしてきっと流れる川の様に
 見つけられるかどうかは 問題外
 どこまで知り得る事が出来るのか それが重要"
これをどう解釈して良いのか悩むね」
「そうよね。どういう意味かしら?」
 とりあえず、私と秋夜君で色々と案を出し合ってみるけど、どれもイマイチ。うーん、訳はこれで合ってると思うんだけど……。
「君らって、英語得意なんだねー。でもそれ、半分しか訳してないよね? 後半分は?」
 ライル君がそう言うって事は、ここまではこの訳で合っているんだろう。
「"長い英文は半分ずつやっていこう" ってのが私達のやり方なの」
「と言うか、君が読み上げてくれれば、僕達が訳す手間を省けるんだけどね」
「そうだね。じゃ、残り半分を読み上げるよ。
"帰る方法は見つけるモノ 手に入れるモノでは無く
 それもひとつの正解 ただそれは意味が解れば終わり
 帰れるか否か それもきっと運しだい
 クリアすべき段階は三つ それが何かは言わないが
 殺人者に良く似た彼女に 会うと良い"
だってさ。何だか良く解んないねー」
 ライル君が読み上げた文章は、やっぱり意味が解らない。大体最後の一文は何なんだろうか?
 ――他にどうすれば良いかも解らないので、私達は仕方なくその妙な詩らしきものに取りかかる事にした。