imitation puzzle 5日目・2
海の凪の様に、穏やかに
空の雲の様に、雄大で
陸の風の様に、爽やかな
何かの様な、何か
たとえそれが、それが何かの
喩えでしかないとしても
何かの様な何か、である事は変わり無い
些細なモノが、きっかけで
多大なコトが、終結で
そんな、何かの様な何か
見つけられたら、はっきりするだろう……――――――
凪
志賀菜乃香。彼女は地歴科の三年生だそうだ。
つまり京也先輩や結架先輩と同じクラスな訳で。だからどうだと言う訳でもないが、……いや、やっぱりどうでもない事でしかないか。あぁ、何が言いたいのか解らない……。
今この中庭に居るのは数人のみ。先生が二人と私、修一、あと何人かの野次馬。普通ならもっと野次馬が居ると思うのだが……。もしかすると、自殺ではそんなに気になる事でも無いのかもしれない。――今のこの学校ならば。
「保科が見つけたんだな? 遺書とかは置いていなかったのか?」
担任でもある吉澤先生が、修一と同じ事を尋ねてきた。
「いいえ、ありませんでした」
そして、私も修一にしたのと同じ返事を返す。
これで通すつもりだ。きっと誰も知らずに居るのだろう、彼女が何を考えていたのかなんて。
「しかし、何で志賀が……?」吉澤先生があごに手を当てながらそう呟く。
「どう言う事ですか?」修一は興味しんしんに聞き返した。
「いや、それが志賀は自殺する様な生徒には到底思えないんだな。……言いたくは無いが、今は妙なゲームが起こっているだろう? だから生徒の様子には気を配っているんだ。だから、何か変わった様子があればすぐに気が付けると思うんだが……」
彼は苦虫を噛み潰したような表情だった。胸中は複雑な感情でざわついているに違いない。
――それならば何故、学校側がゲームについて対処をしないのか聞きたいが……、まぁ良いか。
「でも、人には外面と言うものがありますからね」修一が言う。「先生が気が付かないところで何か悩んでいたのかもしれないし、大した事で無いと思われる様な理由なのかもしれませんよ」
「確かにそれは正論だ。私もその可能性はあると思っている。だが正論である事とそれに対しての感情は違うだろう?」
「そうですね」
吉澤先生は、我が担任ながら少し変わっていると思う。理想が明確に有りそれに向けて行動しているが、別に熱血漢ではなく、そして生徒の事をちゃんと考えている人だ。
私は、生徒の事を考える、と言うのは意外と難しいと思っている。誰だって他人の事を考えるのは難しい。それは、誰だって自分の定規しか持っていないからだ。
"杓子定規"、まさにその言葉通りで、考え方なんて"自分"と"それ以外の人"というカテゴリしかない上に、その "自分" ですら人によって違う。全くの他人であり、中には気の合わない生徒もいるだろうに、それでもその人の定規がどんなものかを考えられるのはすごい事ではないだろうか。少なくとも私はそう思う。
――先生や野次馬が居なくなってから。
「何で修一はあの人の事、知ってたの?」
私がそう尋ねると、彼は呆れた様な表情をした。
「やっぱり知らなかったんだな? あの人は副会長だよ、生徒会の。どーせ詩織の事だから覚えてないだろうとは思ったけどさ」
「成程ね。どっかで見た事があるような気がしたのは、気の所為じゃなかったんだ」
彼女を見た時そう思ったものの、この学校の生徒ならどこかですれ違っていても不思議ではないと勝手に納得していたのだ。
副会長ならば、もっとよく見る機会があった、と言う事か。集会なんかで前で話したりする事が多いのだろうし。だが私は、ああ言うのはやたら話が長くて聞いていられないので、まともに聞いた事は無い。
「やけにあっさりしてるなー。何とも思わないのか?」
「何に対して?」
「何にって……、まぁ全部かな」あやふやな事を修一は言う。「このゲーム、他人の死、主催者、自分の運命、そんなコトについてだよ」
ゲーム・死・犯人・未来、ね……。
何とも思っていない訳が無い。私はむしろ、周りの人がそうであるのに対して、不審に思っているくらいなのだから。
「色々考えてはいるよ。私の場合、表に出てこないだけだし。――修一が運命なんて言葉を使うとは思わなかったけどね」
「そこに突っ込む? それは問題じゃないだろ」
「他の人なら、修一らしいと思うだけかもしれないけどね」
「いやいや、そういう問題でもないだろ」
……なんて、そんな風にどうでも良い事を言い合えたりする辺りが、問題なのだと思うが。
まぁ、そんな事は置いといて。
「で、修一は?」
「主語だけじゃあ会話は成り立たないって」
「会話の流れで話を掴むくらい、してくれても良いんじゃない?」
「解りやすく話す努力をしてもらった方が楽なんだけどね」そんな事を言いながらも彼は、私の問いに答える。「詩織が訊きたいのは、僕の考えだろ? ……そうだな、ゲームの主催者について言うのなら、ずいぶん人を使うのが上手いって事が言えるだろうね。おそらく何人かの生徒を使って、ゲームを行っているんだと思うよ。まぁ、まだ仮説の域を出ていないけれど」
「……じゃあ、共犯者が居るって事?」
修一の考えは、意外すぎる、と言う訳でもないけれど、私は少なからず驚いた。
「そう思う、って話だよ。でも、主犯は一人なんじゃないかな」
「それだと、どこかから主催者の正体が判るんじゃない? 共犯者を作るのは危険な事だと思うけど」
「だね。その辺が仮説でしかない理由なんだよ」
彼は、苦笑いしてそう括った。でも私は、仮説でしかないとしても可能性はあるのだし、それについて考えてみるのも悪くは無い、と思った。
「詩織には、何か仮説がないのか?」
そう来るだろうと思った通り、修一は私の考えを詳しく聞いてきた。
「今の所は、特に無し。疑問点ばかりが大量にあるよ」
「そんなところじゃないかと思ったよ」何だか馬鹿にされてる……?「で、その疑問点を話す気は無い?」
「聞いてどうするの?」
「疑問点てのは多い方が良いものだよ」
……まぁ、彼の言う事もあながち的外れじゃないとは思うけどね。
「どうせ明日は休みだし。ディスカッションでもしようじゃないか」修一はそう提案する。
「別に良いけど。どうせなら咲と飛鳥も誘わない?」
「その方が良いだろうね。人が多い方がいろんな意見が出るし」
まだゲームは始まって間もないが、謎は多いのだから一応整理でもしておかないと、だんだん増える謎の解決が難しくなってくるだろう。
――と言う訳で、明日の予定が決定した。