白と黒のパズル ・ 1
《プロローグ》
1
暗い闇の中。
ただ一人で歩いてきた。
あるとき、ふと後ろを振り返ってみると、歩いてきたところは赤い色で塗りつぶされていた。
鮮やかすぎる赤い色。
それは、この暗い暗闇の中でもはっきりとわかった。
その "赤" は、本来なら人の体の中を流れているものだ。
ここにあるのはそこから離れ、流れ出た "赤"。
それは、この黒一色の闇の世界で認識することのできた、初めての色だった。鮮やかな赤い色。
―――――とてもきれいだ。
そう思った。
そう思ってしまった。
……そう思ってはいけなかったのに。
だからもう戻れなくなった。
立ち止まってしまったから。
そして先に進めなくなった。
"赤"に捕われてしまったから。
気が付いた時はすでに、"赤"にがんじがらめにされていた。
一歩も動けない。
ここから抜け出すのは無理だ。
―――――そう、無理なことなんだ。
そう考えた。
そう考えていたかった。
むしろ、信じたかったというべきかもしれない。
"へたな希望は絶望をうむだけだ"
そんな世界で生きてきたから。
闇の中にずっといるから。
……………けれど。
けれど、心の片隅からは、ひとかけらの希望が消えなかった。
いつかはこの"赤"から抜け出せる、この闇からも逃げ出せる、何て言う、正に夢のような希望だというのに。
なぜそんな希望が残っているのだ?
――――――――そんなものただ残酷なだけなのに。
なぜそんな希望がここにあるのだ?
――――――――ここから出ていけるわけないのに。
――――――― 一体どうやってどうやって抜け出すというのだ?
………………"赤"に捕われているのに。
――――――― 一体どうやってここから抜け出すというのだ?
…………………闇に呑まれそうなのに。
そうして、"赤"に捕われたまま、闇に呑み込まれてしまうのだろう。
抜け出すこともできず、逃げ出すこともできずに。
たった一人この場所で。
そう、ここで。
この暗い昏い闇の中で…………―――――――――