parallel game ・ 2
「――つまり、理由も何も解らないが、突然に異世界であるここに居たんだな?」
「要約するまでもなさそうだけどね」
私達は、キール君に今の状況を話しながら歩いていた。意外とあっさり信じてくれたので、ちょっとびっくり。普通こんなコト信じてはくれないだろう。やっぱり、良い人なのかもw
「どうやって帰るつもりだよ?」
……そう言えばその問題があった。何も考えていないのに。
「それはこれから考えるしかないと思う。第一ぼくらはここに来た方法さえ解らないんだからね」
「そうだな」
「キール君は知らない? 私達が元の世界へ帰る方法」
「知らねーよ」
知らないか……。想像はしてたけれど、少し悲しいかも。これで知ってたらほんとに良い人に認定してあげられたのに。……惜しい。
と、そこに突然人が現れた。
「えーっと、君らがクライムに飛ばされちゃった人?」
黒髪だけど外国人っぽい顔立ちの男の子がそう尋ねてきた。身長は秋夜君くらいだ。歳も私たちと同じくらいかな。ちなみに、キール君は私と同じくらいの身長である。
「それはどういう意味かな?」秋夜君が聞き返す。
「異世界に迷い込んじゃったのかなー、ってコトだよ。全く訳が解らないって感じでも無さそうだし、当たりなんじゃない?」
この男の子は私達がここに来てしまった理由を知っているみたいだ。なんて都合が良いんだろう!
「そうなのよ! 迷い込んじゃったのは私と秋夜君だけなんだけどね、困ってたの。詳しいこと知ってるみたいだし、教えて頂戴!」
「OK,良いよ。じゃぁ、先に名乗っとくね。オレはライル・セレナー。呼び方は『セレナーさん』でも『ライル君』でも『ライちゃんw』でも何でも好きなようにどうぞ」
彼はそう自己紹介して、詳しい事を話し始めた。
「君らが信じてくれるかどうかは解らないんだけどね、オレはまぁいわゆる悪魔なんだ。それで、悪魔界にはもちろん悪魔がたくさん居るんだけど、その中にはやっぱり人で遊ぶのが趣味ってのが居るんだよねー。その人達がさ、ゲームと称して何人も異世界へ飛ばしちゃったんだよ。だから、君らの世界からも他に何人か、この世界へ来てるって訳。いい迷惑だよねー。でさ、そのとばっちりかなんか知らないけど、オレらも "そいつ等が元の世界へ帰るのを手伝ってやれ" とかって飛ばされたんだよ。いやいや全く困ったもんだねー。だから、オレらも帰る方法は知らないんだ。――ま、そんなトコかな? 何か質問はある?」
うーん、信じられるような信じられないような。でも、こんな状況で信じる以外に道は無いし……。
「"オレらも"って事は、悪魔も何人かここに居るんだね?」
私が悩んでいると、秋夜君がライル君にそう尋ねた。
「そうだよ。あと四人だね。そのうち会うと思うよ」
「君の力で帰ることは出来ないのかな?」
「オレじゃぁちょっと無理があるかな。他の人なら出来るかもしれないけど」
ふうん……。ま、悪魔って言っても悪い人じゃ無さそうだし良いか。彼の言う事を全面的に信用しよう!
「帰る方法を探さないとだめなのよね?」
「見つかるかどうか解らないけどね」ライル君はそんな事をあっさりと言う。「エイザードやクライムの考える事だしなー。そんな事もありうるんだよね」
それを聞いたキール君がため息をついた。
「なら、オレはまだこの辺の案内をしないといけないのか?」
「そうだね。君が案内してくれないとどうしようも無いと思うよ」
キール君は嫌そうだけど、秋夜君の意見が最もだ。
――と言う訳で、私達四人でこの辺を探索する事に。
まぁ、そう言ってもほとんど観光気分なんだけどねw
「あ! 見て見て秋夜君! あの建物、面白いデザインじゃない?」
「へぇ、何だか色々な立体が組み合わさった様な形だね」
「何の建物なのかしらね? 科学博物館とかかしら」
「そうだね。雰囲気的にそんな感じだよ」
「あ! あそこには可愛いお店がある〜w」
「入ってみようか?」
「もちろんw」
デートの続きみたいな気分で、歩き回っていた。
「おい、あの二人は元の世界に帰る気あんのか?」
「うーん、オレに聞かれても困るよ? 何かそれでも全然構わなさそうだけどさー。良いんじゃない? 色々見て回るのは楽しいしね☆」
「……そうか、似たもの同士なんだな」
「誰と誰が?」
「お前ら三人が。まぁ、正しくはお前とジュンとか言うヤツだがな」
「そう? そうかもねー。でも君も似てるよ?」
「誰と?」
「オレと同名の友人。いやー、性格とかがそっくりなんだよ。たぶんそろそろ会うと思うけどねー」
「何でそんな事が解るんだ?」
「だって、一人より二人のほうが良いと思わない? だから一応探しながら歩いてるんだよ」
――その頃、その話題の友人君はと言うと。
「――と言う訳だ」
彼、ライル・シザードは練無達に、彼の同名の友人がしていたのと似た様な説明をし終えた所だった。
「ふーん、じゃぁ二人とも悪魔で、そのゲームに巻き込まれちゃったわけ?」紗菜が訊ねた。
「そうなの。さっきまで魔法の勉強してたのに、突然ここに来てしまったのよ。あなた達と同じ様なものね」
こう答えたのは、もちろんライルでは無い。彼女は望月架蓮、悪魔の一人で、日本名なのに何故か金髪碧眼だと言う不思議な少女である。ライルと一緒にここへ飛ばされて来た訳だが、それが何故なのかは本人達には解っていない。他の誰も知らないのかもしれないが。
「あなた達も帰り方は解らないんですか?」トキが訊ねる。
「私には解らないわ。そんなに強い力を持ってる訳でもないし……」架蓮が答える。
「なら、えーっとライルさんだっけ? あなたは?」練無が聞く。
「…………」
「何で黙るんですか」
これは、まぁ、ライル以外の全員の科白とも言えなく無い。
「……単純に魔力だけに関して言えば、人を異世界に飛ばせるだけの力はある」
ライルは答えた。これは本当の事だ。彼は悪魔界で上から十位以内、もしくは五位以内の位置に属する。はっきり言って、優秀なのである。
「だったら、とっとと私達を元の世界に返せば良いんじゃないの? そうすれば、何も問題は無いと思うけど」
きっぱりと紗菜は言う。が、ライルは淡々と返した。
「それが出来ないから問題なんだ。何かに妨害されているみたいだな」
「もう試してみたんですか?」
そう彼に尋ねたのは架蓮だ。彼女はかなり驚いている様子。どうやらそれには全く気が付かなかったらしい。
「面倒な事は早く終わらせたいだろう」
「まぁ、それもそうですね」相槌を打ったのはトキ。「僕もやろうと思えば出来ない事もありませんからね」
……その場に居た全員――と言ってもライル以外の、だが――が、あっけに取られた。
「トキ君、そんな事も出来るの!?」これは紗菜。
「人間じゃないの、あなた?」そう訊ねたのは架蓮。
「あ、だからあまり驚いてなかったの?」妙に納得したのは練無。
「…………」何も言わないが予測はしていたのか、納得しているのはライルだ。
「あなた方には言っていませんでしたね」そう言ってトキは悪魔二人に向かって言う。「僕は時間屋と言って、人の時間を扱う店を開いているんです」
「それがどうして空間移動と関係するの?」架蓮がまた尋ねる。
「時間と空間と言うのは密接な繋がりがあるんですよ。基本的に僕が扱うのは "人の時間" なんですが、例えば過去へ行きたいと思ったとしますね。その場合、時間的な移動はもちろん、空間的な移動もしている訳です。詳しい事は省きますが、とりあえずそう言う訳で僕にも出来るんですよ」
「解った様な解らない様な……」
練無のその言葉が、他の二人(紗菜と架蓮)の気持ちを代弁していた。
「……えーっと、じゃあ何で、トキ君もそれをしないの?」気を取り直して、紗菜が訊ねた。
「それは、僕も出来ないからですよ」
……あっけに取られる発言、再び。
「……それ矛盾してるよ?」練無が、おずおずと訊ねる。
「そう言う意味ではありませんよ」トキはあっさりと返す。「ライルさんと同じ様に、何かの影響を受けているのでは無い
かと思いますね」
と言う訳で、彼らは仕方なく、真面目に帰る方法を探す事に決めた。