imitation puzzle 1日目・3
そして一日が終わる
まだ、ゲームは始まったばかり
始まりに相応しいイベントもあっただろう?
二年生は素敵な花火が見られた筈
さぁ、これからが本番だ
何人が敗北者として命を落とすだろう?
何人が勝利者として命拾いするだろう?
四週間後まで、それは誰にもわからない
待ち合わせ
私達はあの後すぐ寮に戻った。見回りに来た先生に見つかり、追い出されたからだ。それは仕方ないから別に構わないのだが、どうも気分が晴れない。あの貼り紙の内容が現実味を帯びてきたからだ。結架先輩の情報が疑う余地の無い非常に正確なものだと知っているからこそ、余計に気になる。たぶん、他の四人も気になっているんじゃないかと思う。
……咲の所に行ってみるか。
この学校には、三つの科がある。理数科と人語科と地歴科だ。校舎は三つあり、科によって校舎が違う。きっと、特別教室の関係なのだろう。そして、各学年に一クラスずつ、それぞれ四十人が在籍している。寮はその違うクラスの三人で一部屋を使っているのだが、部屋は四人用でベッドと机が一つ多かったりする。昔は各学年四クラスあり、一クラス減った分が余っているらしい。で、寮はもちろん男子寮と女子寮で分かれていて、それぞれ三階建ての六十部屋、他に談話室、食堂、その他諸々……といった具合だ。この学校は各クラスの男女比を同じにしている為、それでも問題は無い。ちなみに、下から一年、二年、三年の部屋割りになっていて、三年の部屋は他の二階の部屋より広いのだとか。行った事が無いので、真偽の程は定かではないが。
それはさておき。私は同室の二人に声を掛けてから、咲の部屋へ向かう。私の部屋とは離れた所にあるのが少し難点か。まぁ、そんな事はどうでもいいが。
ドアをノックして声を掛ける。「咲、居る?」
「詩織? ……あ、ちょっと待ってー」
何だろうと思いながらドアの前で待っていると、しばらくして、咲が出てきた。
「今から結架先輩のトコに行くんだけど、詩織も来る?」
「結架先輩の所?」私は思わず首を傾げた。
「そう。もうすぐ待ち合わせの時間なんだけど……」
……いろいろ聞きたい事もあるし、ちょうど良いかもしれない。ついて行こうか。
「行くよ」そう、答えた。
てな訳で、咲について結架先輩の部屋へ。
「あ、詩織ちゃんも一緒なのね! ちょうど良かった」
私を見て結架先輩はそう言ったが、何が良いのかは解らない。部屋には、結架先輩一人だけだった。ほかの人は何処かへ行っている様だ。――そして、確かに三年の部屋は、私達の部屋より広い事を確認した。なるほど、この階には食堂その他諸々が無いからか、と納得した。
……まぁ、それもさておき。
「結架先輩、あの貼り紙を貼った人物の見当は付いたんですか?」
咲が開口一番、そう聞いた。私もそれを聞きたかった。見当が付いているとは思えないが、結架先輩ならもしかして、と言う事があるかもしれない。
「まだ絞りきれてないわ」結架先輩は苦笑しながら答えた。「ただ、どうも第一発見者は詩織ちゃんの様なのよね」
……え? 私が第一発見者? それは……考えてもみなかった事だ。確かに早い時間にあれを見たが、まさか誰よりも早かったとは。
「それは本当ですか?」つい、そう聞いてしまった。
「98%の確率で本当よ。あなた以前に校舎に入った人が居なければ、あなたが第一発見者になるわね」
そんな事を言われても私に分かる筈も無い。……それに、私以前に入った人が居なければ、誰があの貼り紙を貼ったと言うのだろう。昨日の内に貼って置いたとでも言うのだろうか?
……ただ、少なくとも言える事がある。
「一年生は、誰も来ていませんでしたよ。靴が在りませんでした」
私がそう言うと、結架先輩は嬉しそうに、それを手帳にメモした。
「そう。私も早くに来たけれど、三年は誰も来てなかったわね。詩織ちゃんがあの貼り紙を見ているのは見たし。後は二年生に聞けばはっきりした事が言えるわ」
「そういえば、結架先輩が三年の中で一番に来てた気がしますね。いくら貼り紙に気を取られていたとは言え、あそこを通れば気が付きますし。……二年生で一番に来たのは、同じ文芸部の友久先輩だったと思いますよ。私より先に来た人が居なければ、ですが」
校舎は三つあるのに、玄関は一つしか無いのはどうかと思っていたが、こんな時にその効果を発揮するとは……。なんとも微妙な話である。
結架先輩は、私の発言に満足している様だった。大体の見当が付いてきたからだろうか?しかし、このままでいくと私が貼り紙を貼った人物になってしまうのではないだろうか。
「あの貼り紙はいつ貼られた物だと思いますか?」一応聞いてみた。
「今朝だと思う」そう答えたのは、咲だった。「だってわたし、昨日の夜忘れ物を取りに行ったんだけど、その時にはあんな貼り紙貼って無かったもの」
何という事だろう。これは本当にマジでやばいかもしれない。夜に校舎に入る場合は、事務員の所へ行って鍵を借りて来なくてはならない。その場合、紙にクラスと名前を記入しなくてはならないので、調べれば誰が何時頃校舎に入ったかがわかる。この学校は、戸締りはきっちり確実にする為、開いてる窓から侵入なんてことは出来ないし、専用の鍵を使って入らないと、警報が鳴り響く事になっている。……もしも咲より後に入った人が居なければ、私より先に登校した人が居なければ……。
思わず結架先輩の方を見てしまう。
「咲ちゃんの後に入った人が居ないか、調べておくわね」
結架先輩がどう考えているのかが解らない。咲はこの状況をまるで解っていないみたいだし、どうしようか……。
……とりあえず、咲より後に入った人か、私より先に入った人が見つかる事を祈ろう。必ず居る筈なのだから。だが、そんな簡単に見つかる様な人物なら、あんな貼り紙は貼らないだろうな、と思ってしまう。そうでないと"主催者"とやらはすぐに捕まってしまう。
……なんだか窮地に陥りそうな気がしてきた今日この頃だった。