imitation puzzle 2日目・2
今日の花火は昨日のよりも派手にした
謎としては昨日のよりも地味だが
さて、どうだったかい?
敗北者が沢山出た様だ
まだまだゲームは始まったばかりだと言うのに
君も精々気を付けてくれ
謎が残されている限り、主催者の勝ちでしかない
君も精々頑張ってくれ
まだ死にたくないのなら
蝶の舞う夜
「大丈夫か?」
思わず瞑ってしまっていた目を開けると、文芸部の先輩である赤城友久先輩の顔があった。
「はぁ、大丈夫みたいですね」
思わず間抜けな返事をしてしまった。
……どうして無事なんだろう? 地面にぶつかると思った瞬間、来る筈の衝撃が来なかったので、少し混乱している。無事で嬉しい事よりもそっちが気になるあたり、その証拠だろう。
――ではまず、状況整理から。
今私が居る所。
……あぁ、なんだ。これが答えか。今までそれに気付かなかった辺りどうかしている……。
どうやら私は、体育の授業でちょうどそこに居た友久先輩に受け止めてもらったらしい。今の私は、いわゆる"お姫様抱っこ"状態になっているのだ。
「先輩、下ろしてください」
これが普通の女の子だったら、すごく恥ずかしがったり照れたりするんだろうな、と思いながら先輩に声を掛ける。私は別にどうとも思わないし、友久先輩もどうとも思っていないだろう。先輩は、下ろしてくれた。
「どうもありがとうございます。……良く、落ちてきた人を受け止められましたね。本当に助かりました」
「いや、別に大した事じゃない」 大した事だと思うが……。「それにしても、何であんな所から落ちてきた? 授業中なのに、どうやったら窓から落ちてこれる?」
「そうですよね……。どうも誰かに突き落とされたらしいです」
私にはどうしてもそうとしか思えなかった。そうじゃないと、窓からなんて落ちるはずが無いのだ。私はドジな訳ではないのだし。……誰だか知らないが、腹が立つ。友久先輩がここに居なかったら、なんて考えたくも無い。
「突き落とされた? 良くそれで平然としていられる。そんな事をされる心当たりでも有るのか?」
「少なくともすぐには思い当たりませんが」
別に平然としている訳でもないのだが。頭はフル稼働で理由を探している。クエスチョンマークだらけで、そろそろオーバーヒートしそうなくらいだ。謎だらけなのは誰かの所為なのか? 例えばあの主催者とかの……。それともいつもは気にしなかっただけで、日常にこれだけの謎が溢れているのか? ――そんな事まで考えてしまうのだから。
「……"蝶の舞う夜"……」友久先輩がふと思い出した様に言う。
「何ですか、それ?」
先輩は私よりも遥かに背が高いので、どうしても見上げる格好になってしまう。
「そんな題名の本が在るが、その内容が最近起こる出来事と重なる。これは単なる偶然なのかと思っただけだ」
友久先輩は淡々と言うが、それは単なる偶然なのだろうか。是非その本を読んでみなくてはならない、と心の中にメモをしておく。
――そう言えば。友久先輩に訊いておかなければいけない事があった。
「昨日二年の中で一番に学校に来たのは、友久先輩でしたか?」
もう結架先輩が訊いたのかもしれないが、ちょうどここに友久先輩が居るのだから訊いておく。
「昨日? ……一番だろう。少なくともクラスには誰も来ている様子が無かった」
「私を玄関の所で見ましたか?」
「見た。貼り紙を見ていただろう?」
……あぁ、ということはやっぱり私が一番? 第一発見者で最有力容疑者? 嫌な感じだ……。
「そうですか……」
その声があまりに気落ちした様子だったのか、先輩は不思議そうな表情をした。何も聞かれたりはしなかったが。
――ところで。
今は授業中ではなかったか。そう思って回りを見回すと、その辺に人だかりが出来ていた。爆発のあった教室の近くにはもちろんだが、なぜか私たちの周りにも。……本気で気が付かなかった。一体どれだけ気が動転していたんだか……。
もう授業どころじゃないらしい。ほぼ全校生徒が、外に居るか窓から外を眺めているかだった。先生達は爆発騒ぎの処置に手を取られている様だし、一体何なんだか。大変だな、と他人事の様に思ってしまう。全然全く完全に他人事では無いのだが。
「詩織〜!! 大丈夫だった!?」そう言って咲が駆けつけてきた。
「大丈夫じゃなかったらこんな所に居ないって」
「良かった。飛鳥も無事だったのよ〜! あの教室に居たのに、爆発に巻き込まれずに済んだんだって」
……え? 飛鳥はあの教室に居たのか? というかそれで無事って、運が良すぎるんじゃ? それともそんな大した事無い爆発だったのか?
そう思っていると、その本人がやって来た。あの爆発の所為か、制服が少し焦げている。
「オマエ、悪運強いな」……飛鳥に言われたくない。「良かったな、友久先輩がここに居て」
「飛鳥こそ、良く無事だったね。全く今日はツイてるのかツイてないのか良く解らない日……」
――頭の中で蝶がひらひらと嘲笑うかの様に舞っている気がした。