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imitation puzzle 2日目・3


 何処までが"本当"で、何処からが"真実"か
 "真実はひとつだ"なんて言葉が在るが、それは驕りでしかない
 自分だけの真実ならばひとつで良いのかもしれない
 しかし、世界の真実は幾つも在る
 それが凡て見えていないだけの話

 ……真実なんて、ひとつも無いのかも知れないが

 探したければ探すと良い
 見つかるかどうかすら、怪しいモノを


フレームアウト


 放課後の部室。私が来た時には全員がもう集まっていた。と言っても、単に私が来るのが遅かっただけなのだが。
「遅かったな。何やってたんだ、オマエ?」飛鳥がそう聞いてきた。
「ちょっと図書室に。なかなか見つからなくてね」
 私はさっきまで"蝶の舞う夜"という本を探していたのだ。この学校の図書室に在るかどうかは、パソコンで調べられる様になっている。蔵書の多い図書室なので、在る事と大体の場所は分かっても、探すのに一苦労するのだ。おまけにこの本は、本来ある場所とは違う場所に置かれていた。誰かが間違えたのだろうが、面倒くさかった。まぁ、見つけられたから良かったのだが。
「それにしても、今日は大変だった様ですわね、詩織さんと飛鳥さん」
 そう言ったのは、紫ノ宮凛先輩だ。とても綺麗で長い黒髪の人で、地歴科の二年生である。ちなみに京也先輩も地歴科、友久先輩は人語科だ。
「……保科は赤城が助けたから良いとして、智村がどうして助かったのか不思議だな。あの教室に居た者の中で全く無事だったのは、智村だけだろう?」
 京也先輩の質問に、飛鳥は頭を掻きながら答えた。
「あの時、たまたま床に落ちたペンを拾おうとして屈んだんですよ。その直後にあの爆発があって、ちょうど机の陰になっていたからか、何の被害にも遭わずに済んだんですよね。爆発物とは離れた所に居たってのも良かったみたいだし」
 ……悪運強いな、本当。
 確かに、あの爆発は、音は凄かったものの、教室のもの全部を跡形も無く吹っ飛ばせるほどの威力はなかったらしいし、机の陰で無事ってことも在るのかもしれない。しかしそれでも半数は病院行きなのだ。皆、そんな事は大して気にしていないかの様にしているが、かなり大変な事だと思う……。昨日からそんな事ばかりだ。嫌になる。
「飛鳥さんには、強い守護がついていますから。それが護ってくれたのでしょうね」微妙な発言をする凛先輩。「詩織さんのは、強いのですれけど気紛れなのですわ。今回は護って貰えて良かったですわね」
 そう言うのはあまり信じない方だけれど、凛先輩が言うと妙に真実味がある。何故だろう?
「保科、誰に突き落とされたか判ったか?」友久先輩が私に聞く。
「いいえ全く。あの後数人には聞いてみたんですが、さっぱりで。咲に聞いても、何も見ていないって言うし……」
「そう、私が見たのは詩織がバランスを崩して落ちかけてるトコだったし」
 そんな証言ばかりなのだ。あの場に居た全員にはっきりと聞いたわけじゃないのだが、多分誰も見て居ないと思う。だがそんな事はどうでも良い。それよりも、どうして私があんな目に遭わなければいけなかったのか、それが重要だと思う。……そこまで恨まれる覚えは無い。
「確かに」私の言葉に、飛鳥が同意する。「オマエは、基本的に他人に不干渉だしな」
 なんか失礼だ。まるで私が超個人主義者みたいに聞こえるじゃないか。
「けれど、それはあまり関係ありませんわね」……否定はしてくれないのか、凛先輩……。「それこそが恨みの対象になる事も在りますし」
「そんなこともあるんですか?」咲が聞いた。
「在るだろうな。例えば、物凄く頭が良い人間が他人を見下した様な態度を取って居ると、嫌われると思わないか?」
「まぁ、そうかもしれないですねぇ」
「……私は、頭が良い訳でも、人を見下している訳でも無いんですが」
 一応、口を挟んでみた。京也先輩の言っているのは例えだと承知しているけれど。

「さてさて、その事件が昨日からの事件と関わりが無いのだと言い切れるか?」

 妙に明るい声が、部室に響いた。……これは、あいつか。
「……修一、いきなり入ってくるのはどうかと思うけど?」
 ドアの方を見ると、思った通りの人物だった。
「いや、結架先輩によるとそれくらいがインパクトがあって良いんだそうだよ。いつもそうしてるらしいしね」
 志岐修一、理数科一年で新聞部の私の幼馴染だ。だから彼は結架先輩と知り合いなのである。
「志岐、オマエ病院に運ばれて行ったんじゃないのか?」飛鳥が質問した。
「行ったよ。でも別に大した怪我をした訳じゃなくってね。僕は結架先輩みたいに広い情報網を持っている訳じゃないから、ちょっと取材を兼ねてわざわざ病院まで行ったのさ。ちょうどさっき戻ってきた所なんだ」
 あの爆発のあった教室で授業をしていたのは、理数科の一年だ。そうか、修一も理数科だという事、すっかり忘れていた。私のルームメイトの鳴海朝姫が無事だったという事は確認したのだが、彼の事は完全に忘れていた。……ごめん。
「ねー志岐君、さっき妙なコト言ってなかった?」咲が尋ねる。
「妙な事?」修一は聞き返す。
「"その事件が昨日の事件と関わり無いのか"とかなんとか」
「あぁ、それね」彼は頷き、それについて喋り始めた。「詩織はあの爆発騒ぎの直前もあの教室を見ていたんだろ? もしかすると犯人にとって、とても致命的な何かを詩織が見てしまったのかもしれないじゃないか。だとすると、詩織があんな目に遭った理由が出来ると思わないか?」
 どうしてさっき戻ってきたばかりの修一がそんな事を知ってるのか……、謎だ。
「爆弾は時限式だったのか?」突然、妙な事を京也先輩が聞いた。
「そうです」修一が答える。
「なら在りうるかもしれないが、逆に可能性も低くなるな」
 ……どういう意味だろう?
 皆、疑問に思ったらしく、それに答えるようにして京也先輩は説明する。
「時限式ならば一年は誰でも仕掛けることが出来る。理数科でなくとも、ルームメイトに聞けばあの時間にあの教室を使うことが分かる。そして、保科を突き落としたのと同一犯だとすれば、それを補強する材料になる。保科と同じ教室に居たのは人語科の一年だろう? 保科が外を見ていたことに気が付いて、不味い物を見られたかもしれないと思ったのかもしれない。そこまでは、一応辻褄が合っているんだ。だが、となると保科に見られて不味い物とは何か? それが問題になる」
「そうか」飛鳥が呟く。「時限式の爆弾ならば、見られて不味いモンはそうそう無いよな」
 成程。それもそうかもしれない。後は爆発する時間を待つだけなのだし、それまでに見られて困る様な物が在るのなら、それをほっておくのもどうだかね。

 そう思ったとたん、周りの景色がフレームアウトした。
 真っ白い画面になる。
 ……何だ?

 ……何か、何かがあった気がする……?

 その何かが良く解らない内に、周りの景色がフレームイン。
「どうした?」「大丈夫?」「保科?」「何だ?」「詩織さん?」「大丈夫か?」
 いきなり屈み込んだ私を、皆が心配そうに覗き込んでいる。
 ……どうしたのかって、こっちが聞きたいくらいだ。

 今のは一体何なんだったんだろうか?
 ――この件が解決するまで、私には思い出せなかった。