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imitation puzzle 2日目・4


 このゲームを始めたのは自分
 その責任を取らなければならないのは、百も承知している
 だからと言って止めるつもりも無い
 初めからそのつもりでやって居るのだから

 誰かに捕まえられたなら、止めよう
 誰かが謎を解いたなら、止めよう

 それまでゲームは終わらない
 たとえ何が起こったとしても――――――


透明人間


 午後十一時過ぎ、今私が居るのは寮から二、三分程度のところにある小さな公園である。ここに居るのは、咲と京也先輩と結架先輩と修一と私の計五人。
 何をしにここに居るか? ――それは私にも良く解らない。結架先輩に連れて来られたのだ、何の理由も聞かされずに。
「こんな所に集まってどうするんですか?」私は聞かずには居られなかった。
「ちょっと不味い事態になったんだよ」修一が答えた。「昨日玄関に貼ってあった貼り紙、覚えてるだろ? ――あれを貼れた人物が二人に限定されそうなんだ。詩織と咲ちゃんの二人にね」
 その話か……。今日のうちに結架先輩が調べたのだろう。そして、咲の後に入った人物、私の前に登校した人物が居なかったのだろう。
 あぁ……何て事だろうか……。
「一昨日事務室に鍵を借りて来た生徒は、全校生徒の中で咲ちゃんしか居ないの。これは間違いないわ。で、一番初めに登校した生徒は、やっぱり詩織ちゃんの様なのよね。根拠は、靴箱の靴と事務員さんの証言よ。まぁ、靴は隠しておけばどうにでもなるわよね。でも事務員さんの証言はそうはいかないの。寮を出る生徒を毎日ちゃんとチェックしているのよ」
「男子寮・女子寮共に事務員が居るのはその為なんだ。事務室は寮の玄関の側にあるだろ? 男子寮の事務員さんによると、一番初めに寮を出て行ったのは二年の赤城友久先輩。女子寮の方は、詩織なんだとさ。事務員さんが嘘を吐く必要は無いし、となればやっぱり詩織が一番だと言う事になるだろ」
 結架先輩と修一が交互に説明してくれた。……詳しく説明してくれなくても良かったのにも関わらず。そんな風に言われたら、どうしようもない。
「私じゃないわよ?」咲が言う。「でも詩織でも無いわ。詩織がそんな事する筈は無いし」
「そうだね、私でも無いよ。咲な訳も無いし。――けれどそれじゃおかしいんですよね?そんな人は居ないのに、私達の間の時間に誰かが学校に入った事になるので……」
 私が言うと、全員が一様に困った様な表情をした。
「問題はそこだ」京也先輩が口を開く。「俺は二人が犯人だとは思えないし、その協力をするとも思えない。しかし現実問題として、二人のどちらかの可能性が非常に高い。……この場合はどちらを信用するかだな」
 どちらとは? 何と何を指すのか良く判らないのだが。
 しかし、結架先輩はしっかりと判っている様子で、頬に手を当てながら考え考え言う。
「そうよね。私としてはどちらも同程度に信じられるのよね。二人は犯人じゃないと思うし、その反面情報自体も嘘ではないと思うの。困ったものね」
 成程。私達か、情報か、と言う事か。もちろん私は私達を信じる他無い。嘘は吐いていないのだから。
「俺は二人を信用している。だから、その情報が完全では無いのだと思わざるを得ない。何らかの抜け道が在ったのだろうな」
 そう言ってのける京也先輩はさすがだ。人に信用して貰えるのがこんなにも嬉しい事だとは思わなかった。
 咲も似た様な気持ちらしい。「良い先輩で良かった〜」と胸を撫で下ろしている。
「僕も伊吹先輩に賛成だね」修一が言う。「詩織はともかく、咲ちゃんは絶対にそんな事しないだろうし」
「"ともかく"って何」睨み付けてやった。
「……言葉の綾?」彼は、とぼけた顔をしてほざいた。「まぁ、それは置いといて。二人とも、智村まで巻き添えを食う様な事はしないだろ? あの爆発騒ぎも貼り紙を貼った人物の起こした物だと判ってるんだよ」
「またなんか紙切れが見つかったの?」
 咲が尋ねると、結架先輩がポケットから一枚の紙切れを取り出した。
「これはコピーなんだけれどね」そう言って私たちに見せる。「"ゲームはまだ序盤戦。君たちはもう負けてしまうのかい?"だなんて、人を食ったような文面よね。これは、実験室の戸棚の中にあったの。実験器具の後ろに隠す様にしてね」
 パソコンかなんかで打たれた文章。あの貼り紙と全く一緒とは言えないが、文面からして同じ人物が書いた物だと思われる。あの貼り紙もパソコンで打たれた物だったし。

「そろそろ寮に戻らないか?」京也先輩が言う。
 寮の門限は一応十時だが、事務員さんの許可を貰えれば、十二時ぐらいまで出ても構わない事になっているのだ。だからこうしてこんな時間に公園に来れたのだが、そろそろ戻らなくてはならない。
「そうね、戻りましょ」
 と言う訳で、私達は寮に帰った。


 ――昨日よりは今日、今日よりは明日。
 ゲームはより不可解に、より大規模になっていく。
 透明人間の様に姿を見せない人物の手によって――。